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保田隆明の時事日想:グリーンメーラーの汚名返上か? スティール・パートナーズ (Business Media 誠)

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0706/14/news006.html

 今回、スティールが差し止め請求をせず、買収防衛策の発動を許し、自らの持分の4分の3の現金化に成功すれば、間違いなくグリーンメーラー批判が高まったはずである。それは、TOBを仕掛けたのは、企業からこのような買い取りオファーを引き出すためだったのではないかと批判されるからである。自分たちの保有株式を企業に買い取るように揺さぶる行為はまさにグリーンメーラーであり、それに当てはまる。

 前回の明星食品の案件でも、スティールへのグリーンメーラー批判は高まっていた。スティールが明星食品に対してTOBを仕掛けたときは、TOBプレミアムが低く、それは他社が対抗TOBを仕掛けやすいようにあえて低いプレミアムを付したと言われた。結果、日清食品ホワイトナイトとして登場し、スティールは安々と株式を売り抜けたわけた。だが、この行為がグリーンメーラーであるとの批判を浴びた。また今回も同じ手法ではないかという思惑を呼ぶのは当然である。

 前回の時点でスティールは自らの行為に関する説明をし、グリーンメーラー疑惑を払拭しておくべきであった。しかし、そうしなかったことにより、「スティール=悪者」という図式が出来上がってしまっている。

 日本人的にはもう悪者以外何者でもないよなあ。

 そんな悪者イメージの払拭を目的として、今回スティールの代表であるリヒテンシュタイン氏が来日し、世界初の記者会見を開いた。会見では、経営と所有の分離、一部の株主を不当に扱うことは許されない、長期投資目的である、明星での行為はグリーンメーラーではなかったと主張した。経営と所有の分離や、株主平等の原則などはまさに氏の言うとおりだが、すでに悪者というレッテルが貼られている現状では、そのような正論を並べてみてもあまり響かない。

 一方、リヒテンシュタイン氏は日本の経営者や株主を「Educate」する必要がある、つまり、「教育する」必要があると述べ、テレビではその部分がテロップで強調されて放映された。「弱冠41歳の若造に教育なんぞしてもらういわれはない!」と日本株式会社経営陣を逆なでするにはもってこいのフレーズであった。

 それが例え正論でも、目上路線で言われたのは気に食わない。スティールが会社の株を長期保有をして実際の経営に携わったことはなく、日本人から見れば日本企業のおいしいところをただ食い散らかす存在にしか見えないよ。ただ、このテキストを読んで経営者側が株主に経営方針を聞くのが間抜けだということは分かった。それでも日本企業の買収においてスティールは利益が確定したら売り抜けをするということしかやっていないのだから、翻弄される労働者側としてはやっぱりおもしろくないよなあ。ここらへんは日本的思考なだけで、株式会社をちゃんと理解していれば、文句を言ってはいけないのかもしれない。それにしても、じゃあアメリカ人ならこいつらの言う言葉にちゃんと納得してるの!?

 しかし、それが突然来日し「教育してやる」と言ってしまうと、悪者イメージに拍車がかかるだけで逆効果ですらあろう。村上氏、そしてライブドア社長だった堀江貴文氏にしても、行動や発言が突発的、かつ挑発的であることはよくあった。しかし彼らに共通していたことは、一生懸命メッセージ発信をして、ある一定層の共鳴を呼び起こしていたことであった。その点、今回のリヒテンシュタイン氏の記者会見は共鳴を呼び起こすこともできず、むしろメディアが袋叩きにする絶好の機会を提供しただけの印象すらある。根回し文化の日本において、あまりにも根回し、ロビー活動が少なすぎた。その結果、スティールはグリーンメーラーのレッテルが貼られている。

 確かに今、日本の企業はスティールに教育されているところはある。しかし、それにしても高い授業料だ。企業の利益は吐き出され、スティール以外の株主の儲けはなし、我々一般のサラリーマンかしたらその恩恵にもあずかれるわけがないのでおもしろくないのは当然だ。裁判に負けても利益は出せるのだから、確かに余裕の立場だよなあ。ああ、おもしろくない。