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座談会 UGCの可能性を考える(後編):“公認MAD”は流行るのか 2次創作のこれから (ITmedia News)

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0807/22/news031.html

津田 かたや日本はどうかというと、同人文化って違いますよね。パロディのような批評じゃなくて、作品が好きで好きでたまらないから、その作品の舞台背景やキャラクターや設定を借りて自分で新たに作っていく、オマージュ的な作品の方が大多数。その辺の特殊な日本の同人文化が、海外のクリエイターとか著作権の専門家には理解できないみたいなんですよね。

 ニコニコ動画で盛り上がってるMADも、原作とか事象をバカにしようという批評性が高いMADと、そうじゃないMADの2種類がある。前者のような批評性が高い、対象をバカにするようなMADに、MADの面白さを求めるなら、そんなものに著作権者からお墨付きが出るわけないだろうっていう話はありますよね。

 角川グループが今やってるMAD公認という動きはすごいと思うし、革新的だと思いますけれど、それだけでMAD文化が本当に豊かになるのか、それが唯一の回答かというと、違う気がしますね。

 昔ながらのアンダーグラウンドなMADを知っている身としては、批評性が高いMADの方が本来のMADだと思っていたのだけど、最近はそうでもないようだ。角川の公認するというMADは明らかにリスペクトのある後者の方だからなあ。

津田 じゃ、誰がもうけるの? と言ったら、もしかしたらそのDRMを作るGoogleなのかもしれないし、権利処理を行う JASRAC日本音楽著作権協会)かもしれないし。クリエイターは実はそこで、もしかしたら結果的に負担が増えているだけかもよという……。自由に作品を使えなくなる、そこは気を付けなきゃならないという気はしてるんですよね。

 JASRACが儲けるだけの動きは本当に勘弁。それで、クリエイターにお金が回ればいいけど、実態はそうなっていないもの。

□音楽や映像、歌詞を「引用」できればいいのだが

吉川 いつも思うんですけれど、文字の引用って明確にできるじゃないですか。でも、音楽とか映像になると、いきなりその引用みたいなものが全然できなくて、0か1かになってしまうのは、バランスとれないんですか?

栗原 著作権法上、引用というのは批評とかそういうためのものなので、自分の作品に取り込むというのは想定してないですね。

津田 そうなんですよね、それもあるし、JASRACの考えでいうと歌詞というのは引用できない、という。

栗原 それはちょっと、まぁ、もめることもあるみたいですけどね(笑)

津田 でも、JASRACの見解としてはそうなんですよね、基本的に。おかしいだろうという話は当然あるんだけれども。

 全文とかはまずいかもしれないけれど、ちょっとした歌詞の引用ぐらいいいじゃないか。少なくともJASRACは作者からもお金を取るやり方は止めろ。

□権利者の「心の問題」「金の問題」

津田 「金の問題」と「心の問題」とが両方あって、著作権者側は、そのシチュエーションに応じて、それは金の問題だというふうに言って断ることもあれば、金がもうかるからいいだろうと言うと、心の問題を理由にするという、2段構えがあるから強いんですよ。

栗原 ちなみに特許の世界だとそれは、一応の解決策を法が想定しているんですよ。すでにある発明を改良して新しい発明を作った際、元の人が権利を抱えていて使わせないと言ってきたら、特許庁に裁定を申し出て、無理矢理、強制クロスライセンスさせることがあるんですね。

津田 著作権も一応、文化庁が裁定制度というのを設けているんですけれど、現実には機能してないですよね。

 メジャーレーベルの会社などは、最終的には「金の問題」でしかないのに、さもクリエイターの心を代弁しましたみたいな言い方で権利者ぶるのは止めろ。クリエイターをリスペクトしていないのは、リスナーではなくメジャーレーベルと契約するとそのアーティストの楽曲など一切合財を奪うレーベルとJASRACの方じゃないか。

吉川 逆にフェアユースが認められると、今度はどうしても2次利用されるのが嫌な人にとって、もう我慢できない状況が起きてしまうわけですよね。そういう場合、選択式にして、嫌な人は嫌と明示して、2次利用はまったくダメというような形はあるんですかね?

栗原 絶対使われたくないのであれば、それは一般に公開しないで、クローズドな場だけで会員制などにして公開すればいいんですよ。

津田 たぶん、そこで結局、著作権者とかクリエイターとかアーティストは、最後までそこは譲らないと思うんですよね。「こんな使われ方をするのは嫌だ」と言う権利だけは、とにかく最後まで永遠に残して欲しいというのが人格権の考え方ですから。

 それが今日の本当に一番の大きなテーマで。著作権法をどう変えていくのかと言ったら、もう今はこれだけネットが進んでしまって、コピーも自由になって、2次創作というのがバンバン行われる時代になってしまったんだから、たぶんそこを捨てなきゃいけない時代が来ると思うんですよね。それが嫌だったら、もう作品を公開するなというふうにしないと、たぶんどこかで破綻する気がして。

 でも、作品を公開しないクリエイターって、存在価値があるのかなあ!? まあ、評価が確立されたアーティストとかは、金払いの良い信者だけを集めて自分がそいつらの教祖になる人がいてもいいんだけどさ。でも、あらゆる方面でニッチ化が進むと、どこもたこつぼ状態になって、産業全体から見ると衰退しそうだよね。

吉川 会社の人と飲んでニコニコ動画を見てると話すと、いまだに違法コピーを見る場所でしょって言われますからね(笑)。いや違うんだけれどと、そういう楽しみじゃなくてと言っても分からない。

津田 やっぱりニコニコ動画ってすごいと思いますよ。一時期からテレビ番組のデッドコピーは全部削除する方針に切り替えて、完全とはいかないまでも随分と健全化された。最初はテレビ番組目当ての人がいっぱい来てる中で、UGC的なコミュニティーが育っていって「もうこっちでいいじゃん」って切り捨てるタイミングとか、その辺は絶妙だなと思います。

吉川 うまいですよね、あれは。よく考えてる。

 「ニコニコ動画」の中の人はものすごく努力していると思うのだけど、最近ユーザーとの距離感が微妙になってきているのは感じる。まあ、なんでもタダにして欲しい一部の声の大きいユーザーのことばかり気にかける必要はないのだけどね。ユーザーもすぐに「違法動画の無くなったニコニコ動画は終わった」とか言うなよ。

UGCの未来

――今後、UGCをとりまく環境はどうなっていくと思われますか?

吉川 コミケから漫画家になった人が出たように、UGCをきっかけにして、映像なり音楽なりの才能がメジャーな場所に出るのじゃないかな。その流れは止まらないと思うんですよ。それはいいことだと思うし、そうなってほしい。逆に、それすらも叩くようなら、それは良くないので、ネット世論を改めないといけないような気がしますね。
津田 匿名性のレベルが変わるだけで、全然違うような気がしますけどね、そのへんは。

 ニコニコ動画から、メジャーに出て行く人達はこれからもたくさん出て欲しい。

栗原 私としては、やはり一番最初にも言ったように、こういうUGC的な世界が、今の制度と全然合っていないので、それをなんとかして変えていかなければいけないと思うんですけれど、そういう時に、消費者的な視点がいると思うんですよね。「消費者」というのは、作品を楽しむ人という意味での消費者でもあるし、UGCのクリエイター側としての消費者でもあると思うんです。どうしても消費者の声というと、ちょっと極端に走りがちなので、なにかそのへんを上手く整理して、建設的な議論をできる人達が必要だと思っていて、そういう点では、MIAU(Movements for Internet Active Users:インターネット先進ユーザーの会。津田さんが代表を務め、著作権問題を含むさまざまなネット上の問題に取り組んでいる)に大変期待しています。

津田 いやぁ、いまだにコンテンツ業界から「敵認定」されてますからねぇ。せめて陰口であってくれれば僕も気が楽なんですが(笑)。でも、ちゃんと説明すれば話を聞いてくれる人もいるので、地道にやっていくしかないですね。

栗原 決して敵じゃないですよね、長い目で見れば。

津田 単なるフリーライダーとか、コンテンツはタダで見れればいいという人は、僕らMIAUだって相手にしようとはまったく思ってないです。ちゃんと対価を払うことで、使いやすい便利な環境というのがあるのだったら、ちゃんと作品にはお金を払っていきますよという、そういう人は、日本人って真面目だから間違いなく3〜4割はいるわけですよ。そういう人たちの意見で最大公約数が成立するところをちゃんと主張して、バランスを取っていきましょうよと。既存のコンテンツ業界の人はネットに対して「分からない」という感覚が強すぎて、すごく極端に悪いところばかり見てる気がするので、その辺を解きほぐせればいいんでしょうけれど……。

 本当にクリエイターが自分の欲しいモノを作ってくれたなら、自分はちゃんとお金を払う。だから、クリエイターではない権利者(隣接著作権者)は、消費者を悪いことをする犯罪予備軍と決めつけるような目で見るな。ネット・ユーザーはみんなフリーライダーだとか思うな、自らもネットを勉強しろ。お金を払って映画館に来ている適正な客に毎回「ストップ、映画泥棒!!」みたいな動画を見させるな!!