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宮崎吾朗監督が来岡 ジブリ最新作「ゲド戦記」PR 根底に近代への危機感 (okanichi.co.jp)

http://www.okanichi.co.jp/20060721130608.html

初監督、父との比較など周囲は騒がしいが「今のアニメ技術の9割以上は、父と高畑(勲)さんが築き上げたもの。僕はそれを利用するだけ」とさらり。「アニメは今後、技術的に大幅な進歩は望めないかもしれない。でも描くものは無限大。だからアニメに限界はない」と力強く言い切った。

 まあ、頑張って「親の七光り」を利用してちょうだい。2代目には2代目の苦しみがあり、父を利用するのも別に悪いとは思わない。


**ネタバレあります**

 原作は未見。(このアニメを見て原作も読んでみたいと思った。というかこのアニメが3巻を中心に構成しているらしく、1、2巻の世界観を分かっていないと、映画の置かれている状況を理解しづらいのかもしれない。)

 映画の日の昨日、「ゲド戦記」がネットなどでは酷評が目立つということで、どんなにひどい出来なのかを確認するために観にいった。(趣味悪いな…) あ、あれ!? いや私的には結構おもしろかったぞ!? やっぱり映画というものは期待せずに観にいくのが正しいなあと思ったよ。確かにブラッシュアップが足りないというか、人によっては未完成品だと言われるかもしれない。まだ小さな子供達や、「私、アニメ好き〜」といいつつジブリ作品しか見ない人とか、単にスカッとした娯楽映画を望むカップルなどのジブリが想定している本来の客層には、お世辞にもお奨め出来ないのだけど、自分には荒削りながら吾朗監督の志は見える映画だったと思う。誰もが楽しめる娯楽映画ではないが、アニメとしてはこういう屈折した表現もアリだろう。

 これは間違いなくジブリ作品ではあるのだが、観てみるとやはり宮崎駿の作品ではなく、その息子の宮崎吾朗の感性がある意味、ジブリ作品の中では新鮮に感じられる。ヒロインがさらわれて剣を突きつけられているのに、助けずに悪役に「や(殺)れよ!!」と凄む主人公なんて、今までのジブリ作品ではちょっと考えられない。(笑) この主人公アレンがはたして「ゲド戦記」の原作に忠実なものなのか、宮崎駿のファンタジー絵物語シュナの旅」に影響を受けたものなのか、はたまた「もののけ姫」の主人公アシタカに近いものなのか分からないが、少なくとも彼は王子ではあるけれどアシタカのように凛々しく超人然としていないし、ヤックルの乗りこなしもイマイチだと思う。ウサギの前でも、クモの前でも、そして自分の影の前でも這いつくばり、はっきりいって主人公としてはかなりかっこ悪い。だけど、それもなんだか吾朗監督の今の自己を一部投影しているようで、なんだかおっさんとしては分かるような気もするんだよなあ…。アレンが親を殺した理由がこのアニメでは出てこないが、吾朗が宮崎駿という偉大すぎる父を殺したいぐらい憎む時代があったとすれば、別段ここに明確な理由は要らない。だって、偉大すぎる父は息子にとっては邪魔な存在なんだもん。そうやって、アレン(=一部、吾朗)が這いつくばりまくった後に覚悟を決めたからこそ、鞘から魔法のかかった剣を抜くことが出来たのであり、あのクモと対峙するシーンは、アニメではオーソドックスなシーンでありながらなんだかんだいってかっこいい。

 そして、吾朗監督は自分の出来ることだけを確実にやって、出来てもうまくいかなさそうなこと、始めから出来ないことはしなかった。だから、こういうアニメにしてはなんか地味な展開になったのはある意味なるべくしてなったようにも感じる。まあ、初監督で下手にはりきって派手な絵コンテを切ってもどうせ親父みたいにはうまくいくわけはないのだから、賢明といえば賢明だろう。みんなだって、宮崎駿に幼女とおばあさんを描かせたら、日本、いや世界中にだってそうそう対抗出来る人間がいるわけないのは知っているはずなのだから、そのレベルを彼にいきなり求めるのは酷だと思う。

 だが、ストーリーに関しては、宮崎駿の他作品ですでに語りつくしたために語るテーマを失ってしまい、絵を魅せることだけに終始した「ハウル」よりも、吾朗の「親の七光り」のプレッシャーに押し潰されそうになりながら作った荒削りな「ゲド戦記」では、私は後者の方がおもしろかった。


 もちろん全体の完成度という点では比べるまでもなく大監督・宮崎駿の方が上で、「ゲド戦記」は、

・ストーリーが散漫、展開も唐突すぎ テルーがいきなりなんで竜に変身するのか?など吾朗監督の頭の中では矛盾なく繋がっているのだろうけど、それを映像化する力量が無かった。
・キャラがお見合い状態でしゃべりすぎ キャラど真ん中でアップばかりとか、緩急をつけた動きが出来ていないとか、これも経験不足だろう。
・状況説明に台詞を頼りすぎ キャラの独白で世界観を語りすぎるのはどうかと。
・声優がひどい アレンもテルーもちょっと合っていない。クモとハイタカは意外に渋くて良かった。 むしろジャニーズは金輪際、自分のところのタレントを主人公にねじ込むのは止めていただきたい。アレンはそもそも台詞が少なく、その点で助かった所もあるが、岡田が下手だった事実は変わらない。ま、これは監督の責任ではないか。
ジブリ史上、最も女性キャラが萌えない 主人公も親殺しのごく潰し、いわゆるNEETみたいな感じの人なのでこれも腐女子は萌えないだろう。監督が人間にあまり興味がなさそう…。
・背景美術、人間の描画レベルが一定でなかった 同じ作画監督のとこなんだけど、「ハウル」のおばあちゃん同士の大階段競争は良かったけど、「ゲド戦記」の嫌味なおばちゃん2人組のシーンは他のキャラクターと比べても浮いていて良くなかった。背景も街のシーンは良かったけど、別のところで力の入っていないというか従来のジブリではあり得ない手抜き部分も多かった。果たして各パートを担当した作監達は「総監督がしょぼいのを俺達の力でなんとか見れるレベルにしてやったぜ」と思っているのか、それとも監督の絵コンテを忠実にトレースして作ったのか、そこは興味がある。宮崎駿の命令しか聞かず、駿の仕事しかしたくないというアニメーターがいてもジブリの場合、不思議ではないからね。未熟な監督を周りの人間が支えて作られたのかどうか!?
・キャッチコピーがいろいろと良くない 「見えぬものこそ。」(宣伝文句!? : なにが見えなかったんだ!?)も「いのちを大切にしない奴なんか大嫌いだ!」(テルーの言葉 : 安易な言葉で重みがない)も「世界の均衡が崩れつつある〜」(確か鈴木プロデューサーが新人に考えさせた : 原作がそうなのかもしれないけど)も「テルーの唄」もなんか個人的には嫌い。まあ、テルーの唄にアレンが思わず泣いてしまうシーンは、自分は泣かないけどなんとなく分かるところはある。ふと琴線に触れる歌ってあるからな。で、「もののけ姫」の宣伝コピーは糸井重里の「生きろ。」だったが、あれも奴ぐらい有名人だったから素直に受けいられたともいえるが…。そういえば同時期に「戦って死ね」というのもあったなあ、スプリガンだったっけ!?

 と、悪いところも多いのだけど、だいたいが吾朗監督のアニメ経験不足によるものなので、将来的には解消される可能性もある。彼の第1回目初作品ということもあり、みんなももうちょっとヤフーの批評ばっかり信じずにとりあえず見に行ったらどうだろうか!? もちろん、「やっぱりおもしろくなかった、騙されたっ!!」と思われても当局は一切関知しないが…。(笑)

逆に気に入ったところ

・最初の方で竜同士が戦う飛行シーン
・高台に立つクモにタカが急行直下で迫るシーン
・アレンが剣を抜くシーン

うん、オーソドックスな見せ方とはいえ、なかなか良いシーンもあったと思う。

 一般層への浸透度を考えてもスタジオジブリが日本アニメ業界のトップにいるのは間違いないのだが、宮崎駿高畑勲もすでに高齢であり、次回作があるのかどうかも分からない。また、宮崎駿の後継と言われた「耳をすませば」の監督・近藤喜文はすでに亡くなってしまったし、細田守は「ハウル」の監督を降りて「時をかける少女」を作った。ジブリを支えるのが本当に2代目で良いのかという疑問はあるが、少なくとも犀は振られてしまったのかもしれない…。本来、宮崎吾朗監督はいきなり興行収入という結果を求められるアニメ映画でデビューするのではなく、「On Your Mark」のような小作品をジブリ実験劇場のOVAみたいな形で販売したり、「ゲド戦記」にしたって「海がきこえる」みたいなTV放送で出発していたらもっと違う評価を得られていたと思う。でも、それはスタジオジブリの台所事情が許さないだろうなあ…。なんにしろ大御所・宮崎駿が引退したあとにもスタジオジブリが、アニメ業界のトップブランドを維持し続けることが出来るのか、これは日本の会社のあらゆるところで起きていそうな技術の継承問題なので、これからも要注目だ。首相を安部にしてよいのか!?という問題にも似ているかもしれない。


・公式HP ゲド戦記


・関連リンク あれ…? 面白いじゃん (TBN)

http://tbn2.blog50.fc2.com/blog-entry-162.html

 だいたい同意。結局いろんなところが惜しいんだよなあ。山田が一番ダメダメで笑った。


・関連リンク 今のアニメ技術の9割以上は父と高畑(勲)さんが築き上げた (ニュー速クオリティ)

http://news4vip.livedoor.biz/archives/50740561.html

 なんか物言いは、手塚治虫の息子に通じるものがある。