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賃金格差の拡大が必要だ (池田信夫 blog)

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/b697e23a80b6602167c2f5e43ebad041

前の記事には「学部生向けの経済学Iの内容がここまでも世間では理解されていないということに衝撃を受けています」という経済学者のコメントが来たが、私も同感だ。経済学ってつくづくマイナーな学問なんだな・・・

 まあ、自分も含めて、世の中は先生から比べたら馬鹿ばっかりだからね。でも、教育者がそれを言ったらおしまいだよなあ。それは先生らが、ちゃんと経済学を世間に広めていないという敗北宣言に等しいから。もちろん、私のようなこのBlogしか見ていない人は「経済学」のなんたるかも分かっていないただの部外者であり、先生に直接教えられた生徒さん達はちゃんと正しい「経済学」を学んでいると信じたいのだが、学者の間だけで腑に落ちる学問であるのならばそれはまだ研究レベルの話であって、人に教えて広められる教育レベルにまでは落としこめていないのかもしれない。

私は日本人の情報リテラシー(比較優位)は高いと思うが、情報産業での日本企業の競争力は高くない。その大きな原因は、生産性のきわめて高いプログラマなどの賃金も、製造業的な横並びになっているためだ。ブログでよく出てくる、プログラマの過酷な労働条件と安い賃金は、彼らの生産性に見合った賃金が支払われないため、供給が慢性的に不足することから生じるのである。こうした部門では、労働時間で賃金を支払って年功賃金で会社にしばりつけるといった在来の賃金体系をやめ、優秀なプログラマには契約ベースで管理職より高い賃金を払う必要がある。

要するに、横並びの賃金決定が、一方では非正規労働者や失業者を増やし、他方ではプログラマの悲惨な生活をもたらしているのだ。日本経済が中国との競争で生き残るためには、むしろ各部門の限界生産性の差に対応して正社員の賃金格差がもっと拡大する必要がある。効率の高いIT部門の賃金を高めることによって人的資本の移行を促進し、TFPを引き上げることが「成長戦略」のポイントだ。その結果、所得が高くなる人は問題ではないので、生存最低限度より低くなる人にセーフティ・ネットを提供することが行政の仕事である。

 うーん、おっしゃっていることは至極正しい。生産性の高いプログラマは、生産性の低いプログラマと正しく比較・区別されないといけない。ただ、ブログでよく出てくる過酷な労働で「忙しい、忙しい」と言っている人の良くて半分、悪くて80%くらいは自分だけが「生産性の高いプログラマ」と思っている生産性の低いプログラマのような気もする。本当に優秀で忙しい人は、ソースコードや仕様書を書くのに忙しくて、本来就業時間中にBlogを書いている暇はないものだ。もちろん、さらに優秀なハッカー級のプログラマーは、仕事も早く終えることが出来て就業中の半分は遊んでいる場合もあるのだが、IT業界の中でも産業全体の中でもそれは稀有な存在であり、日本全体の生産性を語るときには無視するべきだろう。

 で、あとの話、「賃金格差の拡大を容認する」という話はそれだけを聞くと週刊誌みたいな刺激的な言葉だが、実はもうホワイトカラーエグゼンプションで紛糾した政治家や経団連達の中でもある程度、共通認識としてあると思う。民主党が政権を取るためだけに使っている言葉が甘いのであって「賃金格差が拡大するのが問題なのではなく、下層に追い込まれる人達が人間らしい最低限の生活さえ送れないのが問題だ。」というのはもう別に目新しい主張でもなんでもない。それに、この「賃金格差の拡大容認」の主張が正しいとしても、直接山形氏の反論に繋がるものではないので、なんか対立軸が不明瞭になってきたと感じるのは私だけだろうか!? 山形氏の「ゴッドランドの経済学」を読む限り、両氏の主張の間は導かれるまでの公式や変数が違うだけで、最後の結論は「相手は勘違いをしている」とお互いに罵りあうほどには乖離していないようにも感じる。また、「自分の身の回りがどうなるのか!?、結果だけを知りたい」というせっかちな我々は、長々と冗長的に続く経済学自体には興味を無くし始めたのかもしれない。いや、どっちも自分の方だけがよく分かっていて、逆に相手の方が勘違いしているというお互いの信念みたいなものに嫌気がさしたのかもしれない。全てにおいて論理的で正しくないといけない偉い人も大変だねえ。
 そして結局、「似非科学を信じる」人達のように、分かりやすい分裂勘違い劇場氏の言葉『「他人の生産性が向上すると自分の給料も増えるのか?」を中学生でもわかるように図解してみました』などに踊らされ、私は「もう誰の言葉が正しいのかよく分からない」という今の状況に至る……。誰にも分かりやすいゆえに怪しい、だけど、これもまた一見正しいように見えてしまうんだよなあ……。


・関連リンク 生産性は誰のものか (404 Blog Not Found)

http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50765006.html

 前回の「生産性より消費性」は言葉の言い換えだけでピンと来なかったが、今回はまあ分かりやすく同意も出来た。単に弾氏が経済学の専門家ではないので、簡単な言葉遣いに私の理解が追いついているだけかもしれないが。

それよりもコメント欄の

議題の正解ですが、
他人の生産性が向上しても、その条件だけでは自分の給料はまだどうなるかわからないが正しい。
世界が2人しかいないとしよう。
他人がいい奴ならば、他人の生産性が向上した場合、その生産性の果実が自分に恵まれ、給料は上がることもある。
他人が嫌な奴ならば、他人の生産性が向上した場合、その生産性の果実が自分に恵まれることなく、他人の物理的な優位性を高め、自分の給料を搾取する方向になれば、自分の給料は下がるのである。
Posted by 直感で野次を入れてみます at 2007年02月16日 01:33

 に妙に納得するものがあった。中国にいろいろアウトソーシングをするのはいいが、かの国がうちの国にも利益をもたらしてくれるかどうかは分からない。自分の給料を搾取する方に回るのであれば、それには徹底対抗していくしかない。


・まとめリンク 平均生産性vs限界生産性議論のまとめと大雑把な解説 (萌え理論Blog)

http://d.hatena.ne.jp/sirouto2/20070215/1171546193

 どちらかというと池田氏擁護。


・関連リンク 限界原理って解り辛すぎるだろ常識的に考えて!(前編) (白痴日記)

http://d.hatena.ne.jp/Muichkine/20070215/1171522129

 経済学の専門用語の補足、限界生産性について。ああ、こういう補足は分かっていない人間にはすごくありがたい。


・続きリンク 今回は限界生産性が賃金を決めるとはなんぞやという事について考えます。

http://d.hatena.ne.jp/Muichkine/20070216/1171578464

 これを最後まで読んで、一気に池田先生の言っていたことが分かってきた。おおぅ、なんかこれこそ「アハ体験」ですな、分かりやすい説明、本当にありがとう、ありがとうっ!!
 まあ、本当はやっぱり分かっていなくて、分かった気になっただけかもしれないけど、先生の言っていることの一部の専門用語でも分かったのは収穫だ。


・数式リンク 生産性と賃金のあれこれ (マーケットの厩)

http://d.hatena.ne.jp/workhorse/20070215#1171500015

 数学が嫌いで、文系に行った人には分かりづらいが、理系にはこちらの方が分かりやすいかもしれない。