caprinのミク廃更生日記

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僕らは本当に残業代が無くても食っていけるのか!?

■パンがなければケーキを食べて、残業代が出なければ帰ればいい (萌え理論Blog)

http://d.hatena.ne.jp/sirouto2/20070907/p2

当初のエントリから書き換えられているが、id:finalvent氏の主張は、舛添厚労相は母親を介護したから、イデオロギー云々に関係なく尊敬できる、というものだった。でもそんなの関係ない。舛添氏の人格批判をしているのではなくて、ホワイトカラー・エグゼンプション制度について、「家庭だんらん法」に言い換えを指示するという、極めて表層的でその場しのぎの対応を取ったから、批判されているのだ。しかし、finalventはまるでそれが理解できない。いわゆる「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」ではないが、「残業代が出なければさっさと帰ればいいじゃない」とでもいう態度の表明は、さすがアルファブロガーの余裕である。


言及リンク ホワエグは自分の労働に対する価値生産性決定の問題であって (煩悩是道場)

http://d.hatena.ne.jp/ululun/20070914/1189736042

こう書くと「サラリーマンと自営業者は違う」とかほげほげふがふがな事を書かれると思うのだけれども、サラリーマンも自営業者も労働者という意味では同じですよね。労働の形態や内容が異なったら得るべき賃金が異なっても構わないと思うほうが謎というか、自分はこの給料だったらこれだけの時間しか働きませんよ、と言うのか、それとも与えられたノルマをこなさなければ給料が貰えないと考えるのかは自由って事でしょ。

 自営業者の場合、労働者の側面もあるけれど、経営者の側面も大きいので、同じということにはならない。でも、自営業者のサラリーマンに対する苛立ちも分からんでもないんだよね。「お前ら基本的に生産性が低いくせに、役に立たない残業をして、余計にサラリー(残業代)もらってるの!? ええ商売やってんな〜。」みたいな。総じて比較すれば、経営者的側面も持つ自営業者の方が大変だろうし(その分リターンも大きいかも)、非正規雇用者である派遣やアルバイトからすれば、「お前らは会社に守られている。甘ったれんな。」うむ、ごもっとも。「でも、あんたらもすぐ仕事を辞めるよね!? サービス残業なんてしないよね!?」そこらあたりはそれなりにお互い様か。なにより、終身雇用が約束されていた昔と今は大分違う。正規と非正規の垣根をひとつ取り払うという意味では、WEもそのひとつかもしれないね。
 ま、逆に顔を真っ赤にして反論するサラリーマン達の中には、この指摘が図星で怒っている人もいれば、上司の圧力でやりたくもない残業を強要され、上司の分の仕事分も余計にやらされている忙しい人達もいる。その不公平の中でさらに残業代がカットされられれば、優秀な人が「やってられねーっ!!」となるのは当たり前だ。WEで懸念されられるのは、そういう今でも余計に働かさせられている優秀な人達のモチベーションがさらに下がって、社会全体の生産力がガクンと下がることだろう。

 ただ、難しいのはWEの理想がうまく回った場合の可能性も分からないでもないんだよなあ。優秀な人の無駄な残業が無くなることで、その与力を家族サービスに使えたり(サービス業の売上に貢献)、余った時間を趣味やその他の仕事の生産性を上げられる。(自分の時間をもっと有効に使えて、フレキシブルな働き方が出来る) でも、これらを実現するにはさまざまな条件が揃わないと絵に描いた餅だ。十分に議論されないままにこれが導入されられると、やっぱり一労働者側としては不安になる。

 まず、無能な人の生産性を上げなければ、優秀な人の残業は減らない。例えば、現在、優秀な人と無能な人の2人がそれぞれ残業込みで1.5倍の仕事と半人前(0.5倍)の仕事をこなしているとする。WEの導入後は、残業をしない分、優秀な人の仕事量が1.2倍になるとしたら、無能な人は最低でも0.8倍の仕事をこなしてくれないことには、優秀な人の残業代は無くならない。*1 会社としてはどちらもの場合でも総数の仕事量が『2』だから、これでやっとトントンなわけだ。でも、ここで無能な人達が自分の範囲内の仕事でさえ時間内に出来ないのに「残業代が出ないので帰ろー」となったら、優秀な人の残業はさらに増えることはあっても減ることはまずないだろう。(残業代も出ないのにっ!!) それに、利益を追求する会社組織が、1.5倍から1.2倍の仕事量に落ちた優秀な人を会社が許すだろうか!? 自分はそれないと思う。今の時間内で仕事量を1.7倍にせよと言い出すに決まっているじゃん。

 だいいち労働者側の働き方の規定だけを緩めて、経営者側の暴走を止める規定を盛り込んでなければ、強い側の都合の良い解釈でこのWEが利用されられるのオチだ。少なくとも会社側が社員の時間的裁量を増やす、もしくは時間外アルバイトや兼業などを許すことをしなければ、片手落ちもいいところだと思う。すでに外資の大企業がやっているような、仕事がちゃんと出来ているのなら「在宅勤務OK」や「毎日会社に出てこなくてもOK」みたいなフレキシブルな時間の使い方を認める、ひるがえっては隷属的な会社への忠誠心は捨てさせなければならない。もう、そんな時代じゃないんだと。でも、そんなことを簡単に出来る勇気のある日本企業は実は結構少ないんじゃないだろうか!? 終身雇用がもう終わりならば、転職への肯定、再就職のしやすさ(年齢制限35歳以下の撤廃など)、起業のしやすさ(銀行の支援など)などもアメリカ並みにしないと。なんでWEという制度だけ先にやってくるんだよ!?

ホワエグを「残業代が出なければさっさと帰ればいいじゃない」と言ったのは誰だろう。
そうした一種の悪意とも言える象徴に押し込んでホワエグの本質を見失わせようとしているのは誰なんでしょうね。

 経営学者達の理想を言えばすごく納得することも多いこのWEだけど、経団連とかが積極的に導入を目指す真意は、わりかし労働者が反対しているところが本質を突いているように思えるのだけど!? 最初の導入を検討しようとして官僚や学者達が話している時は理想のものだったけれど、経団連とかがちょっかいを出してくると、これまた本質が変わってきたというかなんというか。アメリカではホワイトカラーといっても年収が高く、裁量権を持つ経営者や重役にこの法が適用されているのに対し、日本ではなぜか年収500万以上のホワイトカラーというかなり広範な範囲(子供が産まれたばかりでこれから出費がかさむ層あたりにまで)をこの法に規定しようとしているのだろうか!? 労働者が本質を見誤っているというのはある意味本当だけど、これを押し付ける経営者側もWEの説明している時に変質したオブラートにモノをつつんだ言い方をしているように感じる。「もっと自由に働けます。すぐに家に帰れて家族団欒が出来ますよ。」という宣伝はよくやっているけれど、「残業代は無くなりますよ。よって年収は下がりますよ。」というデメリットはまああまり言わない。「そんなことはない」と言うけど、本当か!?


言及リンク 生産性の査定について置き去りにされてるのが問題なんだが (NC-15)

http://d.hatena.ne.jp/muffdiving/20070913/1189783290

 まずは「仕事のペースを自分で調整できる権限」が違う。

 自営の場合は、極端な話、自分で仕事のペースを調整して、休みたいときは休むということができるけど、サラリーマンの場合は、基本的に、会社が要求する成果を自分で決めることができない。成果は基本的に上長の査定が入ることになる。その辺が大きな違いだ。

 例えば、ある人が、客観的に見て一人で二人分の仕事をこなして、二人分の成果を上げたとする。まともな企業だったら「二人分の成果を上げたから給料上げる」ということがあるんだろうが、さじ加減が滅茶苦茶なところだと、「うちは一人で3人分の成果がデフォルトだ。君は二人分の働きしかしないから成果挙げてないから査定しない」ということになるだろう。それじゃ踏んだり蹴ったりだろう。

 その辺の「適正な業務量」の線引きを企業任せにしてる現状でWCE導入したら、とんでもねえことになるわけで。

 さらに、自営の場合、一人で二人分の働きしたら自分に直接恩恵が入ってくるけど、サラリーマンの場合はそれがない。それは、「基本的にサラリーマンは兼業が許されてない」ってのがある。

 大体の企業の就業規則に「兼業禁止」が明記されている以上、ひとつの企業からもらえる額は高が知れてるわけで。その辺もあるんでWCEには基本的に反対ですね。俺は。

 ほぼ同意。また、この査定とかが、合理主義のアメリカ人とかと違って、日本人は特に苦手だと思うんだよね。

残業代ゼロにすれば早く家に帰れるという学者バカな発言が叩かれただけだと思うが?
労働の対価の適切な査定の問題を置き去りにして進んだら、それこそ危険だっての。
まずはそこら辺も頭に入れとかなければWCE導入したらまさに死屍累々の状況になりかねんのだが。

 前も書いたけど、自分はある程度、死屍累々になればいいよと思うよ。その人達の分、自分の取り分が増えるから。また、残業代が出なくなった人達とは、お仲間ということでいいお酒が飲めそうだし。しかし、自分も死ぬ時はせめて布団の上で死にたいなあ。


■反論リンク 自営にはホワエグ関係ないという誤解 (萌え理論Blog)

http://d.hatena.ne.jp/sirouto2/20070908/p2

この厚労省サイトの大臣の発言を、残業代が出なかったら帰ればいい、という風に解釈したらどう誤読なのか。やはりid:ululunさんのブロガーとしての才能は、ツッコミを(入れることではなくて)入れられることにあると思う。

 突っ込みがいのある人は、たくさんトラバがもらえてうらやましいなという話。え、違うの!?

つまり、突然大量の人間がただ働きし始めたら、生産過剰のダンピング競争になってしまう危険性がある、ということだ。もちろん、自営業者のみで完結している市場だとか、その仕事に代替が効かない(「○○センセイの作品なら幾らでも出す」的)なら、賃下げ競争に巻き込まれないが、まあ普通は何かしら影響があるだろう。

それに、残業代の出ない残業が増えた場合、可処分所得も時間も減るわけだから、消費が冷え込めば、内需の産業には結局影響が出るだろう。海外との競争力を重視する経団連には、どうでもいいことかもしれないが、生産過剰の消費減退で不景気になってしまう。だから、「ホワエグ関係ねー」と思いがちだが、市場を鳥瞰的に見ると実は関係があるのだ。

 う〜ん、ここらへん個人的にはもうちょっと考察を深めたいところで、他の人の意見も広く聞きたいな。大なり小なり、自営業者にもWEの影響があるという点は同意。でも、これは日本人がどこまで残業代の出ない残業に耐えられるマゾ体質なのかも重要で、どこかでライフスタイルの変化、つまりはサラリーマン全体が「見返り(残業代)が期待出来ないのならもう残業しないよ」と思うようになれば、このモデルみたいに無条件に100万円も下がるというシナリオも絶対とは言えない。ま、チキンレースでブレーキを絶対踏まず、海に落ちるようなところはご愁傷様としか言えないが、「どんなに働いても残業代はビタ一文出さん」と希望と無謀を履き違えた社長のいる所からはみんな積極的に逃げればいいと思うよ。そういう所で頑張り続ける労働者は、社会全体として迷惑をかけてるからぜひ止めてね。

 また、所得が減れば、消費が冷え込むというのは確かにそうなのだが、逆にWEで家族の余暇が増えればサービス業のチャンスは増えるという側面もある。他には、もうちょっと長期的に見て、お金もなくて、することがなくなって、妻や恋人とSEXばかりするようになったら子供が出来るというシナリオも考えられる。(何せ、今の日本のSEX率は世界最低レベルだからね。そしてその言い訳の大半は「暇がない」ということだし。) 『家庭団らん法案』ではなく『もっとSEX出来ますよ法案』だったらもっと受けも違ったかもしれないね。なんにしろ子供が産まれれば、否応なく消費は増えるからなあ。

 まあ、毎日ネット接続をしてBlogを書いているような自分のような人間には、余暇もネット三昧で電気代だけ増えて損という話もある。つまり自分が言いたいのは、恋人がいて、ただでSEX出来るような奴は死ねばいいのに。(笑)


言及リンク WEと労働の価値について (novtan別館)

http://d.hatena.ne.jp/NOV1975/20070915/p1

もちろん、ホワエグの本質は「残業代が出なければさっさと帰ればいいじゃない」ではない。「残業代でないけど血反吐を吐いても残業しろ」です。なぜこんな表現になるかというと、残業が自己責任になってしまうから。その本質を「残業代が出なければ早く帰る動機付けになる」と言い換えてしまうセンスに皆怒りを覚えているのですよ。

「残業」を減らすことは、WEの目的ではありません。「残業代」を減らすことが目的なのですから。僕は意味のない残業は大いに減らすべきだと思うし、それは意味のない残業をしている、という事実を評価することだったり、上司が適正なノルマを与えているか、会社として月給に見合わない過酷な仕事を要求していないか、等々をきちんと見ていくことで実現すべきことだと思っています。WEによる残業代抑制は、するべき残業に対価を払うことが難しい(月給をその分上げるというのは会社経営的にどうかと思うし、ボーナスは会社全体の業績に左右される部分が大きい)。

*1:本当に優秀な人は、人の10倍、100倍は働くということもあるだろうが、ここは思いっきり単純化しての話なので、人の1.5倍働いていたら仕事の出来る人とみなす